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いかに機嫌良く生きるか

概要

[2025-06-28 Sat]–[2025-06-29 Sun] 作成.

健常者でもうつ病になるし、精神疾患を患っても幸福に過ごすことができる。
幸福とか幸せというと大それた人生の命題のように聞こえるが、つまり日々を機嫌良く過ごすことであると考えている。

最近の自分は機嫌が良いだろうか?

そうは思えないとか、良くも悪くもないとか、考えたくもないとか、そのような状態の人は少なくないと思う。このページが力になれば嬉しい。

今を当たり前のように機嫌良く過ごせている人も気をつけて欲しい。
そのような人は大抵、日々通うべき学校や仕事があって、とりあえず生活ができていて、周囲に顔も見たくもないほど憎い人はおらず、人間関係も問題なく、問題があっても相談できる知人がいると思う。

つまり自分が決められること以外の要素で自らの機嫌の良さが決定しているわけだ。
もちろん仕事や付き合う相手は選べる。だが上司や学校となると完全に自分の好みにすることは難しくなる。

いつ何があって、自らの機嫌を秘密裏に支えている要素が無くなるかは分からない。
このページで、自分が自由にできることで自分の機嫌を良くできないかを考える。

機嫌とはどのようなものか

唐突だが、機嫌を小さな惑星に例えてみたい。

その惑星は、北極と南極があり、極の位置は常に少しずつ動いている。
あなたの心はその惑星の地表に居て、毎日近くを動き周ることができる。
『星の王子さま』の表紙を想像してほしい(ただ、それより大きな惑星だ)。
また時どき風が吹いて、心は様々な方向に飛ばされることもある。

心は、北極に近付くほど機嫌が良くなり、南極に近付くほど機嫌が悪くなる。
そして心は羅針盤を持っていない。

さて、あなたならどうするだろうか?

多くの人は早速うろうろと動き周ってみるだろう。
人々はしばらく動くと心境に変化があることに気付く。面白くて様々な方向に動いてみると、ある時間違って南極のほうに大きく飛ばされてしまう。

そこである人は参ってしまって立ち止まる。
とんでもない事になった。更に動いたらもっと悪くなるかもしれない。
しかしその人は、自分が動かないと南極はゆっくり自分のほうに近付いてくることを知らなかった。
気付くと、その人は南極点で動けなくなった。これがうつ病だ。

あるいは別の人は南に進んでしまった後、どうにか引き返そうともがくだろう。
しかし惑星は景色がどこも変わらないため迷ってしまうことが多い。
ぶつくさ文句を言いながら、南の辺りを堂々巡りしている。

また別の人はある時気付く。
自分がどこを進んできたか、目印を付けたら良いのではないか。

その人は地表に日付と気分、今日やることと昨日起こったことを刻み、進み出した。
ある日ふと振り返ると、地表には点が——少し曲っているが概ね真っ直ぐ——刻まれていて、まるで線のようになっている。

彼は記録を始めた頃の気分と今の気分を比べ、どれほど変化したかを元に次に進むべき方向を決めることにした。
彼はこの後何度か大きく風に飛ばされるかもしれないが、飛ばされた先でも目印を付けることは止めないだろう。

南極からどう脱するか

うつ症状や慢性的な苦悩を感じる状況を、どうやったら緩和できるだろう。
こればかりは「これさえやれば解決する」という共通の改善は現状ない。

だが苦痛の源を遮断しないことには、改善を始めることに着手できないことは理解する必要がある。
苦痛の源は人それぞれである。それが明らかであればやるべき事は明確である。

心の奥底では何が問題なのかを分かっていながら、自らの心の声に耳を傾けずに、これまでに身につけた社会性が「それが問題であるはずがない」「その問題から逃げてしまえば、支えてくれた人に申し訳ないし、周りの人に自分が悪く思われてしまうに違いない」と思い込むことこそが最も自身を苦しめる問題であると、どこかで納得するしかない。

例えば念願叶って結婚した人が、パートナーとの度重なる理解の相違によって、心を病んでしまった場合「せっかく結婚できたのに、もし離婚すれば再び結婚できないかもしれない」とか「離婚してしまえば、あれだけ自分を苦しめた独身状態に逆戻りするに違いない」とか考えるだろう。
するとその人はパートナーとの話し合いで解決しようとするだろうが、パートナーからすると自分が受け入れたくない要求ばかりされているようにしか思えず、仮に一旦は合意できたとしても、今度はパートナー側が不機嫌になってしまうことが考えられる。

もちろん、中にはパートナーと完全に納得し合うことができ、お互いが気持ちよく尊重し合えるようになる場合があるかもしれないが、通常はどちらかが折れているだけだ。
そして通常はどちらか一方(あるいは両方)が相手より多く譲っていると不満に感じるだろう。

ここで自分の社会的立場よりも自分の機嫌を優先できるかどうかが、良くて今後数年の幸福感を左右することになる。

まずは気付くこと——自分が随分南に来てしまったと知ること——が必要なのだ。

自分が好きなことを見つける

ここ十年で自分が決断した大きなことのうち、どれだけが自分の心が本当に望むことで、どれだけが周りからの目線によって規制された意見だろうか?
後者をより多く選んでいる人は、きっと幼いころから社会に出るまで、保護者や学校から「周りが喜ぶ方を選べ」と刷り込まれ続けてきたと思う。

そのような人は、機嫌が良い人がどうやって決断しているかを知らないかもしれない。
彼らは、外食で好きなメニューを頼むのと同じように、あるいは好きな色を選ぶのと同じようにして、人生を決断している。

すると社会的目線だけで生きてきた人は気付くだろう。
自分は何が好きで、何をするのが好きな人なのか、当の自分自身が知らないのだ。

そのような人は、できる限り早く好きなことを見付けるべきだ。
なぜなら多くの人はそれを小さなときから繰り返してきた経験で知っていて、それを知らないあなたは、どんなに地位や財産などを持っていたとしても「貧しい」と言わざるを得ないからだ。

しかし、もし今のあなたが自分が好きな物事を知らなくても、今から知ることはでき、それで十分間に合う。

方法 1:

  1. 自分がこれまでやってきたことで、日々していることを一つずつ異なる付箋紙や紙切れに書き出す
  2. 自分がついついやりたくなることの順に付箋を並びかえ、その順番を写真に撮る
  3. それをやった後で「やらなければよかった」と後悔したことの順に並びかえ、その順番を写真に撮る
  4. 2 と 3 の写真を見比べる。
    1. 2 が高くて 3 が低いものがおそらくあなたの好きなことだ
    2. 2 も 3 も高いものは、ついついやってしまうがいつも後悔することだ。
    3. 2 が低くて 3 が高いものは、やりたくもならないし後悔もする
    4. 2 も 3 も低いものは、やりたくはないが後悔もしないことだ
  5. やることが増えたら付箋を追加して 2-4 を定期的に繰り返す

さて、4-1 はあなたが好きなことだと考えられる。どうやったらもっと楽しいかをいろいろ実験してみるといい。
例えばカメラで写真を撮るのが好きなら、違うカメラやレンズを試してみたり、デジタルとフィルムでどう違うか試してみたり、撮る対象を変えてみたりしよう。

4-2 はなるべく遠ざけよう。

  • その道具などを片づけて、普段見えないようにできないだろうか?
  • それをやりたくなったら、必ず他のこと(家事など)を一つやったら始めてもいいと決めてみよう

4-3 はできるだけやらないようにしたいし、4-4 は実はやった方がいいかもしれない。
どうしてもやらなければならないなら、以下を考えてみよう。

  • 自動化できないか(AI や電気製品)?
  • それが好きな人にお願いできないか?手伝ってもらえないか?あるいは仕事として依頼できないか?
  • 楽しいことと同時にできないか?
  • それが好きだという人に、楽しめる秘訣を聞き出せないか?
  • 環境を変えたらできるようにならないだろうか?

いかにして行動に移すか

自分の位置によって機嫌が変わる惑星の例えを前述したが、そこで立ち止まってしまう人がいたと思う。
これの多くは、行動を後回しにしてしまう習慣によって発生する。
「先延ばし癖」という名前も付いている。英語では procrastination という。

夏休みの宿題や課題、締め切りのある仕事で先延ばしがよく起こることは、これまでの人生で多くの人が経験したり他人が先延ばしをしている所を見たことがあるだろう。
これは実は好きなことでも、また締め切りが無くても(むしろ無い方が)起こることがある。

先延ばし癖は意志の弱さによるものではない。ある意味では先延ばしは依存症である。
そして先延ばしを止める方法はいろいろあり、人によって効果の有無が異なる。

先延ばし癖については、別のページで詳しく書くべき価値があると思うほどに現代人を苦しめる問題であると認識している。

ジャーナリングのすすめ

筆者もうつ病にかかったが、いわゆるジャーナリングが効果的であった。

ジャーナリングとは日記のようなもので、自分だけで書き、自分だけが読み返す。
小さなメモなりノートなりと筆記用具があれば始められる。

書き方の流儀は様々である上に自分が決めることであるが、筆者は次のようなルールで毎日書き込んでいる。

  • その日の日付を書き、その右はバレットジャーナル(下記参照)欄とする
  • 以下書くことは自由で、一冊に全てまとめて書く
  • ○題名、本文… ○題名、本文…の繰り返し
  • なにを書くかは自由だが、多くはプロンプト(下記参照)への回答を書く

バレットジャーナルとは、毎日達成したいことをあらかじめ決めておき、それを達成できたら今日の日付の欄に○を、できなければ×を書く手法だ。
文字を書くのがあまり好きではなかったり、得意ではなかったりする人はこれをメインの記入方法にしてもいいかもしれない。

プロンプトとは、ジャーナル上での話題や質問である。これに答えるようにジャーナルを書き進める。
ネタは多いほうがよく、その日の気分で書きたいプロンプトを選ぶ。

日常的なプロンプトの例としては以下の通り。

  • 今日やって良かったことは?
  • 明日に起こりそうなことと、それに対する反応は?
  • 最近やろうとして忘れていた事は?
  • 今日起きた事 3 つに感謝するなら、何を選ぶ?

もちろん突然起こったことや電話口でのメモをしてもいいし、愚痴を書き連ねてもいい。
ただジャーナルは時々読み返すことになるので、あまりネガティブなことばかりを書くのはおすすめしない。
捨てたい感情は別の紙に書いてから捨てると、癒しの効果があるとされるので筆者はそうしている。

日を置いて同じプロンプトで書いても構わない。過去の自分との違いを客観的に確認することができる。

さて、なぜジャーナリングが先延ばしに有効かというと、まずジャーナリング自体がかなり気楽なもので、一日なにもしなかった日でもジャーナリングはできてしまうことが多いためである。
これは個人差が大きいだろうから一概には言えないが、とにかく素直に自分が考えていることを書き出すことは気持ちがいい。

またジャーナリングを進めていくために必要なプロンプト自体を考えることが非常に楽しい。
自分の認識の世界に挑戦するような難しい質問をよく考えている。
興味深いことに、一部のプロンプトは AI にも答えることができなかった。

ジャーナルを読み返して感想を書く、というプロンプトも自らを本のようにして読めるのは新鮮であったし、自分が変化していく様子を観察できるのでおすすめである。

スケジューリングのすすめ

スケジューリングは先延ばし癖への対処に役に立った。
予定をカレンダーや手帖に書き込んだり、スマホのアプリやカレンダー機能を使用しても良い。

筆者は自分が好きなことが分かってきても、あまり行動に移すことができなかった。
その時に思い付いたのが、まずジャーナルに今週末にやりたいことを平日の間に書き溜めておき、金曜日の夜、土日の予定表に時間を割り当てながらやりたいことでスケジュールを埋めていく方法だった。

うつが寛解してきた当初は「休日だから休むほうがよい」という考えだった。事実うつ症状があるのであれば、その方が回復が早い可能性はある。
しかし十分に回復するころになると、徐々に「休日に時間潰ししかしない自分」に嫌気が差してくるものである。

土日のスケジュールのコツは、これもまた「気楽に」運用することである。
書いた全てを実行できなくても良いとする。実行の順番が多少前後したり、時間がずれても気にしない。
ただし書いたことの実行率はジャーナルに記録することにしている。

もうひとつのコツは、予定を細かくすることだ。
特に取りかかるまでを億劫に感じる事は、とにかく細分化しておくのが良い。

例えば皿洗いが苦手なら「台所にいく」という予定を入れるべきだし、ジョギングがなかなかできないなら「外に出る」と予定すべきだ。

こうして週末になるころには、好きなことがたくさん詰まった状態になる。
そのうち幾つも達成できれば充実した週末を過ごすことになるし、家族や友人との予定が入ったらそちらを優先して構わない。

自分を大切にすること

先延ばし癖を直すための方法を調べている際に「現代人の病は、自らを大切にしないことにある」と述べている人を見つけた。

これは非常に正しいと考えている。
多くの人が自分の心の声よりも、社会的にどうであるか、誰かの目線で大丈夫な決断であるかを重視して生きている。

また現代は人類が最も誘惑の多い環境で生活していると言えるのではないだろうか。
スマホの無料ゲーム・ YouTube ・ SNS ・ WEB ポルノ・ギャンブル・ドラッグ・ etc.
我々は常に依存症と隣合わせで生きていることにもっと気を付けなければならない。

このような世界で、強いモチベーションを維持しながら自分の心の声に素直に従って生きること、つまり自分を大事に生きることは簡単にできることではない。
特に幼少期からの躾によって、社会の目線を過剰に内在化した人にとっては尚更難しいことだ。

ここまで読んだ方々が自らの状況を危惧し、自分を大切に・機嫌良く生きるために好きなことを発見し、先延ばし癖を断つことの重要性を納得いただけたことを期待している。

しかし何より大切なのは、自ら考えて実行に移すことだ。
読者の一人でも多くの方が北へ向かって行動できれば、筆者は幸いである。

Created: 2025-06-29 Sun 16:14