S3組織構造について
概要
作成, 公開.
現代的な組織は大きく分けて二種類ある——階層が有るか、無いかである。
階層がある組織は国家機関や企業に一般的に取り入れられている。
株主や大臣の方針に従い、最終的に責任を取る立場が必要だからだ。
一方で町内会や趣味の集まりなどは、自律的に目標を設定したり、ある程度自由に参加・離脱したりすることができる。このため、階層が無くても機能するだろう。
全く問題を抱えない組織というものはほぼ存在し得ないと考えるが、階層が無い組織に着目すると、次のような理由で組織は失敗する。
- 曖昧な組織目標
- 責任の不在、あるいは責任の不明確な所在
- メンバーの入れ替わりによる組織機能の崩壊
- 少数に偏った作業
- 少数に偏った意思決定権
- 意思表示の少ない人の意見の無視・多い人の意見の重視
- いわゆる「お気持ち」による意思決定
- 主要メンバーの燃え尽き など
ここで提案する S3組織構造 は、主に階層の無い組織が、上記の課題を克服するための構造のことである1。
S3組織構造は、
- 運営チャネルと感情チャネルの分離
- 定期的な意思決定
- 役割の交代制
- 手続きの文書化
により、メンバーの心理的安全性と組織の持続可能性の両方を守り、信頼できる組織を作ることを目的に考案したものである。
連絡チャネルの分離
従来の組織では、感情の表現は容易ではない。
感情は往々にして組織を動かすための武器として用いられるからだ。
- 悪態をつき、譲歩を引き出す
- 感謝を示すことで、重荷を他者に押し付ける
- グループからの離脱を仄めかし、意見を通す
- 必要とされたいという心理を悪用する
- 貢献の少なさなどを罪悪感として利用する など
これらの手練手管が横行する組織では、感情操作に秀でた人がそうでない人を動かすことになる。
S3組織構造では、感情表現は他者に動いてもらうためではなく、
- 感じた不満や怒りを、ルールや構造の変更によって解決するために使う
- 感謝や喜びを、メンバー全体のモチベーション向上のために使う。
これを達成するために、少なくとも2つの連絡チャネルを導入する。
- 運営チャネル: 事実・提案・意思決定・活動履歴など
- 感情チャネル: 相談・愚痴・不満・感謝・鼓舞など
運営チャネルでは、感情的な表現はせずに粛々と手続きを行う。
感情チャネルでは、自由にかつ自分に素直に感情を表現できる。
感情チャネルでの発信に対して、基本的に誰も慰めたり、思ってもいないのに同調したり、反論したりするべきではない。
もちろん、共感するのなら同調することができる。
ただし、いくら皆が一斉に声を上げても、すぐさまルールや構造が変更されることはない。
どんな意見も、提案の形式に従って、運営チャネルで提案されない限り効力を持たない。
詳細は定期的な意思決定にて解説する。
発信するチャネルを間違えた場合は、この後紹介する役割の一つが適切に案内する。
組織が大きくなるにつれ、この二つのチャネルでは足りなくなる場合は、
- 組織カテゴリ:運営チャネル
- 組織カテゴリ:感情チャネル
- 組織カテゴリ:履歴チャネル
- 活動1カテゴリ:運営チャネル
- 活動1カテゴリ:感情チャネル
- 活動1カテゴリ:履歴チャネル
- 活動2カテゴリ:運営チャネル
- ……
といった具合に、運営から活動履歴を分けたり、組織全体に関わる部分と諸活動とを分離したりすることができる。
ただし事実と感情を表明するためのチャネルは必ず分けることで、感情による集団運営を避けられる。
定期的な意思決定
階層の無い組織は有る組織に比べて、組織の目標やルールなどを決定することが難しい。
階層が高い上司が決定したことに基本的に従うことが求められる階層組織とは異なり、メンバーの意見をうまく調整する必要があるからだ。
- 代表者が独断でルールを作る
- いつも決まったメンバーが意思決定に参画
- 有能か、貢献度の高いメンバーが非公式な意思決定をする
- いつの間にか決まったルールがあった
- メンバーから「知らないルールがある」と言われる
- ルールや目標に対して賛成派と反対派が議論し続ける
このような問題を解決するため、S3組織構造では
- 一定期間に一度、意思決定するための時間を確保する … 期間T
- 毎週末、4週間に1回、4半年に1回、etc.
- 意見の提案は議決の期間以外の時に随時受け付ける … T = 提案期間 + 議決期間
- 議決期間中、提案に対して:
意思決定が何故必要か・どのように反映され、運用され、否決されるかを、提案時に必ず含める必要がある。
例: 活動カテゴリを活動Xカテゴリ・Yカテゴリに分離する提案
- (理由) 活動カテゴリ内の作業の煩雑化、整理の複雑化のため
- (開始) 可決により、意思決定期間T+2期から開始
- (準備) T+1期中に役割Rが二名に引き継ぎ、T+1期末にカテゴリを複製
- (終了) T+3期以降、当案廃案の可決があった期間Tnの期末にX・Yカテゴリを廃止
これにより、
- いつ議決が行われるかを全員が把握できる
- 個人的な都合ではなく、役割の都合で採否が決まる
- 運用がうまくいかない場合は凍結したり、廃案にしたりできる
- 議決期間を越えて議論が続く場合、その期中には可決されない
- 非公式な決定は運用されない
- 権力が固定化しない。
役割の交代
従来の階層的でない組織では、役割が固定的であることが多い。
- 自主的に立候補した役割
- 頼まれて、引き受けた役割
- 押し付けられた役割
誰かがやらなければならない事は、自ら望もうが望むまいが、一度引き受けてしまうと簡単に辞めると言い出しづらくなる。
「無責任と言われるのではないか」とか「自分から望んだくせに」とか「他の誰かにお願いしにくい」とか「自分が辞めたら組織が終わるかも」とか、何であれ苦しみやすい。
これを解決するため、S3組織構造では
- 役割は十分簡単にする
- 役割は一定期間で手元を離れる
- 役割の作業範囲を明示した文書を整備する
上記を達成するために、以下のように運用することを推奨する。
- 前に役割を担当した人の期間が終わる前に、次の役割担当期間が開始する
- 役割の数はメンバー総数の1/2以下にする3
- 引き継ぎは最低限にする
- 役割の種類によって以下を分散させる
- 1人が担当する期間
- 次の担当者との重複期間
- 開始・終了時期
この図はあくまで例だが、対応案件が役割の期間より長いほど Cのような長い重複が望ましい。
手続きの文書化
メンバー・役割担当者が常に流動的に変動することを前提とする S3組織構造において、文書化は避けて通れない必要条件だ。
- メンバー全員が組織の現状を確認できる
- 属人化を抑えられる
- 正しい認識の上に意思決定を行うための資料になる
これを実践するために、少なくとも
- 組織のルール
- 役割のタスク
- 役割の引き継ぎ
- 意思決定に関わる提案
- 問題発生時の報告
- 組織ログ
これらの記述方法を定める必要がある。
S3組織構造の実践
このエントリを公開した当初において、S3組織構造はまだ机上の空論である。
ここまで辿り着いた方の中で、この仕組みを実践的に身に着けたい、自分の組織に応用したい、などと考えてくれた方には、是非以下のDiscordサーバーに参加して欲しい。
discord.gg/Qr4qbq9pUT
このサーバー自体がS3組織構造によって運営されている。
実際に役割を担当することで生じる不満や、新メンバーをいかに不安にさせずに溶け込めるようにするか、などといった運用を話し合うことを目的としたグループだ。
S3組織構造を別の組織で運用する際の支援やフィードバック、 S3組織構造を多くの人に知ってもらうための広報活動なども、このグループ内でいづれ始めていきたいと考えている。